まりもっこり日和

本・漫画・映画のレビューと日々のつれづれ。

不安に向き合う大人と子ども。

 考えと行動。このふたつは、ばらばらのことなの。

ーーーマルヨライン・ホフ『小さな可能性』小学館, 2010年 P.110 L.1

小さな可能性 (児童単行本)

小さな可能性 (児童単行本)

 

 オランダで最も歴史と権威のある児童文学賞「金の石筆賞」を受賞した作品。医師として戦場に向かい、行方不明になったパパの帰りを待つ親子、「パパの行方が分からない」という不安に向き合う大人と子どもの姿を描いています。

 

子どもらしい発想の危うさ

「パパが無事に帰ってくる可能性を大きくするには、どうしたらいい?」

可能性は、大きくしたり、小さくしたりできる。そう聞いた少女キークは、他の生命を傷つけるといった、突飛な行動に出ようとする。

キークの行動には、他の生命を奪うことに関する想像力が欠如している。ここに、子どもならではの危うさが垣間見える。

 

大人の果たすべき役割とは?

一方で、同じ不安と戦うママは、食器棚に色を塗ることで、不安を紛らそうとする。

そして、キークの行動が明るみに出た時には、キークの行動の動機については理解を示した上で、行動の中身については「考えと行動。このふたつは、ばらばらのことなの」と突きつける。

誰も傷つけない方法で不安に向き合う方法を、自ら示す。

頭ごなしにキークの行動を否定するのではなく、想像に任せて行動することの危うさと、行動を踏み止まる理性の大切さを、子どもに訴えかける。

大人が子どもに伝えなければならないこと、果たすべき役割が、ママの一言に示されている。

 

不安とともに生きる。

この本の訳者・野坂悦子氏は、あとがきでこう綴っている。

考えと行動は別。なのに、その区別ができない人たちが子どもにも大人にもふえ、想像できないような、おそろしい事件はあとをたちません。

(中略)心配なときに、ときどきおかしなことを考えてしまう。そんな「キーク」は、わたしたちひとりひとりの心の中にいるのです。

ーーー同書 P.166 L.14-P.167 L.6より引用

多かれ少なかれ、人の心につきまとう不安。

その不安とともに、どう生きるのか?

老若男女問わず、家族やパートナー等、大切な人と一緒に、読みたいなぁと思う1冊でした。