まりもっこり日和

本・漫画・映画のレビューと日々のつれづれ。

小説の懐の深さのゆえんとは?

一回の失敗でその人の努力を全部なしにすんなよって思うの。逆はアリやと思うの。ホンマはいい人やったって思うのは素敵なことやから。

ーーー小説家・西加奈子氏/若林正恭『ご本、出しときますね?』ポプラ社, 2017年 P.271より引用。

ご本、出しときますね?

本好き芸人・オードリー若林正恭氏が、朝井リョウ角田光代…etc.小説家やエッセイストと、「マイルール」etc.についてトークを繰り広げる、バラエティ番組の単行本化。

 

”根はいい子制度”は絶対ではない

角田光代氏・西加奈子氏との鼎談にて。

「”根はいい子制度”は絶対ではない」がマイルール、小説家・西加奈子氏は話す。

不良が雨の日に路地裏で子猫抱いてるのを偶然見かけて「ドキッ☆ ほんとはいいやつ!」みたいなのあるやん?一気に針がグッと「いい人」サイドに振れるやつ。それは素敵な制度やと思うねん。だからといって、普段(中略)めちゃくちゃ優しいおじいちゃんが「チッ」って舌打ちしてるのを見て「うわっ! ホンマは嫌な人やったんや」って思うのはなしにしようってこと。(中略)

ーー同著 P.271 L.1-10

 

人間の多面性を描く

西加奈子氏のマイルールを受けて、角田光代氏はこう話す。

本当の悪人もいないし、善人ぶっている人もいないし、悪いけど、悪いだけの人もいない。それを配分していくのが、小説だと思っています。

だから、西さんのルールは、そのまま小説のルールでもあるんでしょうね。(角田光代)
ーーBSジャパン若林正恭:編『ご本、出しときますね?』ポプラ社, 2017年 P.273

 

懐の深い、小説世界。

小説には、ジャンキーも、犯罪者も、ヒモも、どうしようもない悪人も、老若男女や一般的な善悪の価値判断問わず、さまざまな人物が登場する。

その意味で、小説世界は、今私が生きるこの現実世界より、よっぽど懐が深く、受け皿も広い。

その懐の深さのゆえんは、作家の人間愛と観察眼なのかもしれない。

三者の鼎談から、そんなことを考えました。