まりもっこり日和

本・漫画・映画のレビューと日々のつれづれ。

”普通”の押し付けという暴力。

ジャケ買い、ならぬ、タイトル借りした1冊。

 

夫のちんぽが入らない

夫のちんぽが入らない

 

いきなりだが、夫のちんぽが入らない。本気で言っている。交際期間も含めて二十年、この「ちんぽが入らない」問題は、私たちをじわじわと苦しめてきた。

ーーー同著 P.3

冒頭の書き出しから引き込まれる作品。愛し合いながらも、身体では繋がれない夫婦。2人の出会いから現在に至るまでのパートナーシップの変容を、妻である「私」の視点から描いた私小説です。

 

母親からの愛情を受けずに育ち、人と関わることが苦手だった「私」は、物心ついた頃から、さまざまな「”普通”なら、かくあるべき」という周りの押し付けに苦しんでいる。

小学校高学年で、登校前に激しい腹痛を起こすと「お前は心が弱い、情けない」と叱られる。

夫と出会い、結婚するも、タイトル通り「夫のちんぽが入らない」問題に直面、「結婚したのに、子どもができないのはおかしい」と周りから罵倒される……

2人の間に愛情はある、ただ入らないだけなのに、そのことが2人を苦しめていく。

 

「いい年齢になったら結婚するのが普通」

「結婚したら、子どもを産むのが普通」

世間話で、さらっと”普通”が持ち出される。

話題を出す側に、悪意はない。会話のネタ、言葉のあやくらいにしか捉えていない。

しかし、その”普通”が、他の誰かにとっても普通であるとは限らない。

”普通”の押し付けが、知らぬ間に誰かを傷つけているかもしれない。

 ヒリヒリする「私」の物語から、そんなことを考えました。