まりもっこり日和

本・漫画・映画のレビューと日々のつれづれ。

「水と油」であることを前提にして。

イスラム世界と西欧世界とが、水と油であることを前提として、しかし、そのうえで、暴力によって人の命をこれ以上奪うことを互いにやめる。そのために、どのような知恵が必要なのかを考えなければなりません。

ーーー内藤正典『となりのイスラム』ミシマ社,2016年 P.7

となりのイスラム 世界の3人に1人がイスラム教徒になる時代
1980年代にシリアを、その後ヨーロッパでトルコ出身の移民を、それぞれ現地で研究し、1991年からはトルコに住まいを構えて研究を続け、当事者として「となりのイスラム」を見てきた内藤正典氏の著書。

イスラム教徒とは、どんな人なのか?

イスラムと西欧世界の衝突はなぜ起きるのか?

イスラム国は、なぜできたのか?

メディアでは、テロや暴力と結び付けられることの多いイスラムのあれこれについて、わかりやすい言葉で書いています。

 

自分の常識で裁くことの暴力性。

イスラムと、私たち、あるいは近代以降の西欧世界で生まれた価値観とは、根本的に相入れないところがある、と内藤氏は言う。

たとえば、イスラム教徒の女性が着用するヴェール。夫や家族の前では肌を見せてはならないという神の示した規範にもとづく慣習だ。

しかし、個人の自由を重んじるキリスト教的な発想を持つ文化圏に暮らす人々は「イスラムでは女性の人権が抑圧されている」と、自身のものさしで批判する。

こうした批判は、イスラム教徒に対する差別や排斥等といった暴力へとエスカレートする。

 

イスラム自体は、暴力ではない。

西欧世界で、批判や差別を受ける中で、イスラム教徒は、生きる場所を失っていく。

そうした抑圧や西欧世界に対する不満が、ともすればイスラム国の出現、暴力の連鎖につながっているのではないか、と内藤氏は語る。

あとがきで、20数年、当事者として「となりのイスラム」を見てきた内藤氏は、イスラム教徒の姿を以下のように書いている。

①人間が一番えらいと思わない人、②人と人とのあいだに線引きしない人、③弱い立場の人を助けずにはいられない人、④神の定めたルールの下では存分に生活をエンジョイする人、⑤死後の来世を信じて、楽園(天国)に入れてもらえるように善行を摘もうとする人。

ーーー同書 P.250

上記のイスラム教徒の姿に、暴力性は見受けられない。

西欧世界がイスラム教徒の実情を知らないといえばそれまでだが、そういう姿を見ようとしなかったことの問題は深い。

 

 「水と油」を前提に、歩み寄る努力を。

 日本では、イスラム教徒に出会うことは、少ないかもしれない。

でも、世界に14〜15億人、3人に1人を占める彼らと、いつ出会うかはわからない。

全くの異文化に遭遇した時の、「水と油」を前提に、歩み寄る努力。

著者・内藤正典氏の姿勢に、共感を覚えました。

 

イスラム過激派によるテロが起きました”
ニュースを見て「イスラムは怖い…」と感じる方にこそ、読んでほしい1冊です。